当社はTVU Oneを活用した、Starlink回線による映像伝送のパフォーマンス改善に取り組んでおります。途中経過ではありますが、現在開発中の「Starlinkモード(仮)」において映像伝送の安定性について一定の有効性が得られることを確認しました。
本検証では、従来のStarlink伝送で懸念されていた通信断やパケットロスがどの程度顕在化するのかを中心に調査し、新しい伝送モード開発の進捗状況ともあわせて報告いたします。
今回の結果にはTVU Networks社が推進する技術開発の一端が反映されており、より高度な伝送品質を目指すうえで重要な知見が得られました。
StarlinkとTVU OneをLANケーブルで接続
今回の検証では、以下のような環境構成を準備しました。

StarlinkとStarlink Mini

TVU One V3(Starlinkモード/通常モード)
Starlink回線をTVU Oneへ直接LANケーブルで接続することで、5G/4G LTE/Wi-Fiのネットワーク経路を介さないシンプルな回線構成とし、映像伝送時の安定性やパケットロスなどを観察しました。具体的には以下の通りです。
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- TVU One V3 *Starlink専用モード
- TVU One V3 *通常モード(IS+)
- Starlink(標準ムーブ)
- Starlink Mini
- 接続方式:LANケーブルでTVU One V3とStarlink及びStarlink Miniを直接接続
本検証の主眼はTVUの強みであるボンディング技術をあえて使わず、単一回線だけでどこまで安定した映像伝送を実現できるか?を検証することです。以前からStarlinkの通信は定期的な通信遅延や切断が懸念されていましたが、Starlinkの特性を詳しく検証することで、TVU Oneの既存性能や現在開発中の新たな伝送モードとの適合性を確かめました。

【TVU受信画面】モバイル回線は一切使わず、Starlinkのみでの伝送を実施
TVUの受信画面では各回線の伝送レートをリアルタイムに監視可能です。今回単一回線での伝送となりますので、「Starlinkの回線ビットレート≒トータルのビットレート」として表示されます。
Starlink単独回線による伝送性能
今回の検証では、以下の点に注目しました。
- 安定性
従来のTVUの伝送(IS+)と比較し、今回検証した専用モードではStarlink使用時に発生していた回線の大きな途絶が発生しにくい傾向が認められました。長時間にわたる映像伝送は概ね途切れずに行えました。 - パケットロス
検証では「iperf」を用いて通信帯域を監視しました。Starlink特有の遅延やパケットロスは一部観察されましたが、その範囲は限定的でした。結果として、専用モードでは全体の映像品質に大きな影響が及ぶことはなく、明確に認識するレベルの映像損失は発生しませんでした。
伝送設定
ディレイ: 2.5秒 ビットレート: 5Mbps

専用モードによる伝送は通常のIS+伝送と比較し伝送レートが安定しており、ショックが少ないことが確認できた。
これらの結果から、専用モードではStarlink単一回線での安定運用において非常に効果的であることが分かり、特殊環境や災害対策用途など、多彩な現場ニーズに対応できる可能性が確認できました。もちろん、ネットワークの混雑状況や衛星の配置など、状況によって変動要素は存在しますが、今回の結果はポジティブな見通しを示唆するものでした。

Starlink Miniでの伝送。標準アンテナと比較し不安定になる場面が多かったが、専用モードであれば比較的安定した伝送が可能だった。
ディレイについて、専用モードでの推奨値は最短2.5秒の結果となりました。これ以上ディレイを縮めると伝送レートが不安定になることが確認されたためです。TVU独自のIS+では1秒未満の低遅延伝送が可能ですが、Starlink使用時は十分なディレイを設定することが安定伝送の鍵となります。
Starlinkモード(仮)の開発
TVU Networks社が開発を進める「Starlinkモード(仮)」では、Starlink回線を単独利用する場合、更なる高い安定性と低遅延を実現することを目標にしています。今回の初期テストでは、IS+と比較し以下の点が特に期待されています。
- トラフィック制御技術の強化による瞬断時の映像乱れの軽減
- 特定の帯域変動に対する適応制御方法の向上
- 送信機側設定の自動最適化機能による安定性の向上
Starlinkモード(仮)が正式版として完成すれば、TVU Oneが本来持つエラー訂正機能、ボンディング技術、冗長構成との組み合わせがさらに強化され、回線状況により左右されにくい高品質な映像伝送が可能になります。特に、災害時や大規模イベントと行った公衆モバイルネットワークが細くなりやすい環境や、より安定性が重要視されるシーンでの運用効果が大いに期待されるところです。
今後の展開と応用
Starlink回線を活用した検証と新しい伝送モードの開発成果を踏まえると、以下のような応用が見込まれます。
- 長距離や山間部など、既存のモバイル通信の確保が難しい環境での映像伝送
- 緊急災害時の報道中継や、救助活動時の通信が途絶しやすいエリアでの安定活用
- 多数の現場が同時に映像伝送を必要とする、イベント会場での柔軟なネットワーク構築
すでに安定したTVUのボンディング技術と組み合わせることで、瞬断への自動切替や回線負荷分散など、さらに高い信頼性を得ることも見込めます。特にStarlinkが今後より多くのエリアで利用可能になれば、地上回線や従来衛星回線のみではカバーしきれない地域でも、高品質なライブ中継を実施できる土台が広がります。
まとめ
今回の検証では、TVU OneとStarlink及びStarlink Miniを組み合わせた映像伝送が実用的な安定性を示し、新しい伝送モードの初期テストでも将来性が期待できる結果が得られました。従来の課題だった衛星通信特有の遅延やパケットロスのリスクが軽減されることで、運用の幅が大きく広がります。
さらに、今後は複数回線のボンディングやバックアップを組み合わせた複合的なソリューションが一般化し、さまざまな環境で高品質な映像配信が実現する可能性があります。
弊社ではお客様と共にデモや実証実験を積み重ねながら、より最適な運用手順や機能追加を検討してまいります。StarlinkとTVU Oneの組み合わせが幅広い場面で活用できるよう、最新の技術情報を継続的に提供し、安全で円滑な映像伝送をサポートしていきます。引き続き、皆様のご要望に応じたソリューション設計を進め、通信の可能性を広げる取り組みを強化して参ります。
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